それから

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  • ハッピーエンド
  • 恋愛
  • 登場人物が死ぬの無し
  • 性的描写無し
  • 残酷描写無し
  • 楽しんだもの勝ち
1人目

郡山と仙台。
新幹線ならすぐだと言われても、学生の俺たちにはその距離が妙に現実的だった。会いたい気持ちと、財布の中身はいつも反比例していた。
それでも、その日は違った。
たまたま二人で入った郡山駅前のパチンコ屋。雨を避けただけのつもりが、気づけば箱が積み上がっていた。
「ねえ、これって夢じゃないよね」
彼女が笑いながら言う。
俺は玉の音に紛れて、何度も頷いた。
換金した札束は、やけに軽く感じた。
努力も計画もなく、ただ偶然が転がり込んできたことが、少し怖かった。
そのまま寿司屋に入った。
回らない寿司屋だった。
普段なら絶対に選ばない店だ。
「好きなの頼みなよ」
自分でも驚くほど、声は自然に出た。
彼女は一瞬ためらってから、遠慮なく注文した。
中トロ、ウニ、穴子。
湯気の立つ味噌汁。
カウンター越しに職人の手元を見ながら、
俺たちは勝ちの理由も、明日の予定も話さなかった。
郡山と仙台。
また離れた場所に戻ることは分かっていた。
それでも、
この昼だけは、距離も時間も、
全部まとめて使い切ってしまった気がした。
店を出たとき、
彼女が何か言いかけて、やめた。
俺も聞かなかった。
その沈黙が、
次に書かれる物語の入口になることを、
まだ誰も知らない。