追跡

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3000文字以下 30人リレー
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  • 暴力描写有り
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1人目

エルヴァンは、湿ったジャングルの奥深くで、慎重に足を進めた。背の高いシダ植物が絡み合うように生い茂り、足元では湿った土がわずかに沈み込む感触がブーツに伝わる。空気は重く、熱帯特有の蒸し暑さが彼の額に汗を浮かべていた。背中に背負った軽量の通信水晶からは時折微かな魔力の波動が漏れ、遠くにいる議会の存在を思い出させた。
「現在位置、セクター7の北東部。目標の尾行を継続中」と、エルヴァンは低く抑えた声で通信水晶に囁いた。
目の前を進む二つの影――黒い装備に身を包んだ二人組は、まるでジャングルの闇に溶け込むように動いていた。
彼らの動きは熟練の暗殺者のそれで、足音はほとんど聞こえず、時折、枝を避ける際のわずかなマントの擦れる音だけが響いた。
エルヴァンの視線は鋭く、彼らの行動を一瞬たりとも見逃さないよう注視していた。
議会からの情報によれば、この二人組は、ジャングルの奥に隠された「聖域」に向かっている可能性が高い。聖域の詳細は不明だが、近隣で観測された異常な魔力の波動と関係があるとされていた。エルヴァンの任務は、彼らの目的地を突き止め、可能な限りその情報を議会に伝えることだった。

2人目

不意に、先行していた二人組が足を止めた。エルヴァンは反射的に大樹の陰に身を潜め、息を殺す。心臓の鼓動が耳の奥で激しく鳴り響く。
「…気づかれたか?」
彼がそう疑った瞬間、一人が地面に手を触れた。

3人目

一人が地面に手を触れてから少しすると、空間が歪んだかのように、先ほどまではなかった建築物が姿を現していた。

「何が起きたんだ!?さっきまで何もなかったはずだ……」

エルヴァンは、目の前に光景に驚きを隠せないでいた。

4人目

エルヴァンは、議会との情報共有をするため、少し離れた距離で移動をすると、気付かれないように気をつけながら、小型撮影機器を用いて、映像を議会へと送っていた。

しかし、議会側の人間は提供された映像を見て、驚きを隠せないでいた。

「な、なにも映っていない」

エルヴァンから送られてきた映像には、彼が目の前に見えている建築物の姿形も全く映っていなかったのである。議会側は、送られてきた映像について、戸惑いを隠せないでいた。

5人目

議会側は、エルヴァンへと通信を行い、事情を説明するのだった。

「そんな馬鹿な!?だって、現実に目の前にあるんですよ……」

エルヴァンは、議会側の連絡を聞いて驚きを隠せないでいた。何か電波妨害をしているものがあるのか、幻覚を見せられているのか、二人組に気付かれないように調査を開始することにした。

6人目

議会の一員であるバルトスは、ノイズ一つないクリアな「空き地」の映像を睨みつけ、通信機のスイッチを切った。
「電波妨害? 幻覚? 冗談ではない。最新型の暗号化通信だぞ。妨害があれば映像は乱れるはずだが、これはあまりに鮮明だ。……映るべき建物が、最初から存在しないことを証明している」
バルトスは周囲の議員たちを見渡し、冷酷に告げた。
「エルヴァンは『見えないもの』を見ている。極限状態での精神崩壊だ。これ以上、狂人の妄想に付き合って我々のリソースを割くわけにはいかない。彼のアクセス権限を凍結し、現地調査員としての資格を剥奪しろ」
「しかし、彼はまだ調査を……」

7人目

「それなら、私達がエルヴァンを回収して、現地調査を続けるわ。それなら、構わないかしら?」

会話に割って入ってきたのは、部屋に入ってきた男女二人組の調査員だった。

「我々が現地に赴いて、彼を回収した後に、調査を行います。我々のバイタルをチェックしてもらいながら、調査を行う。もし、彼同様に我々にも、彼が見えているものが見えれば、バイタルに何か変化が起きるかもしれません。もし、何も変化がなければ、彼の言っていることは真実だったのだと証明になります」

議会側が頭を抱えながら、対応を模索していた。そこで、バルトスは口を開く。

「わかった。君達に任せよう。ただ、現地までジェット機を飛ばすにしても、音などで気付かれてしまう心配がある」

「それなら、研究所の所長さんが用意してくださったステルスジェット機で飛んで行きます」

「後は君たちに任せる」

「了解……」

二人は、敬礼をすると二人組は部屋を出ていき、現地へと赴く準備をしていた。

8人目

エルヴァンの人生は、あまり選択肢を与えられたものではなかった。

「野郎、俺を踏み台にしやがって!!」

幼い彼は父の前に立つと、厳かな気持ちで心が一杯になった。それは堅固さと突出性を兼ね備えた、軍人としての鉄の心を養育させた。

しかし運命の天秤は傾く。愛する妻を喪い、更に軍閣内部の政争に敗れた父は、かつての荘厳な威厳を消失させた。

「どいつもこいつも馬鹿にしやがって!」

それはエルヴァンが10歳の頃であり、少年にとって身近な英雄の堕落は、彼が軍学校に入学した後も心に深い哀愁を残した。

そして彼にはエルヴィンという弟が居た。エルヴィンは未発達な声帯を持つも、廃れた父や離れた兄を想う優しい少年だ。

そんな彼に難癖をつけた父は、その身体的な欠点を誹り、少しでも多く殴りつけることに執着した。

「てめぇ!!ちゃんと喋りやがれ!!!」

「う、うーうー!うー」

「舐めてんのかてめぇ!!表現が重複してんだよ!!代名詞使えや!!」

この事実をエルヴァンが知る事になるのは、家が焼失したという報せを聞いたからだ。

弟や父を想うが涙は出なかった。それは軍人としての厳格な理性が、獰猛な感情を支配した証拠であることを彼は察した。

だがエルヴァンは知らない、発見された遺体が父だけな事。そして弟エルヴィンの遺体は、発見されることがなかった事も。