謎の仕事

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1人目

夕暮れが街をオレンジ色に染める中、競パン姿の二人の男、ケンジとタケシは、汗と潮風の匂いをまとって港の桟橋を歩いていた。
肩に担いだ巨大なクーラーボックスが、歩くたびにゴトゴトと音を立てる。
ボックスの中では、氷と一緒に「何か」が静かに揺れていた。
「なあ、ケンジ。この仕事、ほんとに大丈夫か?」
タケシが少し不安げに声を潜めた。
「心配すんなよ、タケシ。いつもの仕事と変わんねえよ。運んで渡して、金もらって終わりだろ?」
ケンジは陽気に笑い、肩を軽く叩いた。彼の髪は未だに海水で濡れてギラギラと光っていた。
二人は港から続く細い道を抜け、丘の上に佇む古びた屋敷へと向かっていた。
その屋敷は、街の誰もが知る「ジェリーフィッシュ」と呼ばれる場所だった。
かつては豪華なパーティーが開かれたというが、今は朽ちかけた外壁と蔦に覆われた窓が不気味な雰囲気を漂わせている。
「でもさ、なんでこんなとこに運ぶんだ? しかも『獲物』って…何だよ、それ」
タケシはクーラーボックスの重さに顔をしかめながら、ケンジに尋ねた。
「細けえことは気にするなって。金払いがいいんだから、そんだけで十分だろ」
ケンジは足を速めた。タケシの不安な声を聞きたくないからだ。
二人が屋敷の重厚なオーク材の扉の前に立つと、まるで待ち構えていたかのように、音もなく扉が内側へと開いた。
「いらっしゃい。運んできてくれたのは君たちかい?」
ひんやりとした空気と共に現れたのは、真っ白なシルクのガウンを羽織った初老の男だった。その足元からは、どこか人工的な塩素の匂いが漂ってくる。男は二人を値踏みするように眺めると、口角を吊り上げた。
「さあ、中へ。獲物(ブツ)は地下のプールサイドで受け取ろう」
案内された大広間の奥には、巨大な吹き抜けのプールエリアが広がっていた。
しかし、そこは優雅な水遊びの場ではなかった。 照明は怪しく青白く光り、プールの周囲にはケンジやタケシと同じ極限まで面積を削った競パン姿の男たちが十数人も集められていた。
彼等は皆鍛え上げられた肉体を持ち、肌はオイルで不自然なほどテカテカと光っている。誰もが一言も発さず、無機質な表情でプールの縁に等間隔で立たされていた。
二人は促されるまま、重いクーラーボックスを抱えてプールの縁へと歩みを進めた。自分たちの足音が、高い天井に反響して奇妙に大きく響く。
「なあ、ケンジ…あいつら、何なんだ?」
タケシが隣で肩を強張らせ、囁くように言った。 プールの周囲に整然と並ぶ男達。彼らもまた、自分たちと同じような肉体のラインを露わにする競パン一枚の姿だ。
しかし、決定的な違和感があった。
「…運び屋には見えねえな」
ケンジが苦い顔で低く応えた。
自分達が持ってきたような、重いクーラーボックスはどこにも見当たらない。
そもそもこんな大勢に頼むような仕事ではない。本来は1人か2人で十分な仕事なのだ。

2人目

「ほう…素晴らしい…」
初老の男――この屋敷の主であろう人物は、ケンジとタケシが床に置いたクーラーボックスには目もくれず、二人の肉体をじっくりと舐めるように見つめた。
「おい、アンタ。俺を見るよりクーラーボックスの中身を確認してくれよ。仕事はこれで終わりだ」
ケンジが威嚇するように一歩前に出た。

3人目

「ああ、分かっているとも。何せ、これが本日の『メインディッシュ』の鍵なのだから」
初老の男は、ゆっくりと腰を落とした。 細く白い指が、クーラーボックスのラッチをカチリ、と外す。 蓋が開いた瞬間、逃げ場を失っていた冷気が溢れ出し、それと共に「それ」が姿を現した。

氷水の海に浮かんでいたのは、透き通るような美しさと、心臓を鷲掴みにされるような禍々しさを併せ持つ、巨大なクラゲだった。
その触手は紫色の毒々しい光を放ちながら脈動している。
二人が命がけで深海から引き揚げた、この世の物とは思えない異形だ。