暗闇

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1人目

「あれ、おかしいな」
俺は確かに照明のスイッチを押したはずだ。だが、明るくならない。
スイッチの接触が悪いのだろうか?そう思い、他のスイッチを押してみたがそれも作動しなかった。
「停電か…?いや、ここは予備の発電機があるからこうはならないはずなんだが」
故障かもしれない。
俺は慣れた手つきで、壁のスイッチパネルを分解し始めた。どうせ誰もいない。少し手荒にやっても問題ないだろう。この施設は古いし、基盤が埃をかぶってショートでもしたのかもしれない。

2人目

俺はスイッチパネルのカバーを外し、内部の配線にテスターを当てた。
「ふむ...やはり電気が来ていないな」
テスターの針はピクリとも動かない。発電機からの供給ラインに問題があるようだ。俺はパネルを元に戻し、腰に吊るした懐中電灯を取り出して点灯させた。施設の奥、地下にある発電機室へ向かうためだ。

懐中電灯の細い光が、暗闇に閉ざされた廊下を頼りなく照らす。

3人目

「とりあえず、地下の発電機室への階段を探すか……」
俺は、壁に手を触れながら、地下へと続く階段を探すために歩みを進めていく。
「ウウ……」
しばらく歩いていると、呻き声のような物が聞こえ始めていく。しかし、近づいてくる様子は見られず、姿を捉えることはできていなかった。

4人目

(幻聴か? いや、確かに聞こえた。だが、この施設のどこからだ?)
俺は歩みを止め、耳を澄ませた。呻き声は、すぐそばではないが、この暗闇のどこかから確かに響いている。それは苦しみの声にも、何かを訴えかける声にも聞こえたが、その音量からして、俺が目指している地下ではなく、この階のどこかにいる人間の声のように思えた。
「誰かいるのか!」
思わず声を張り上げたが、返事はない。
代わりに呻き声は一瞬途切れ、そして壁の向こう側から「カツン、カツン」という固い物が床を打つような不規則な音が微かに聞こえ始めた。
恐怖と好奇心が同時に俺の背筋を這い上がった。通報することも考えたが、通信施設が破壊されただけでなく電力も失われたこの状況で外部と連絡を取るのは不可能だ。

5人目

「カツン、カツン」という音は、まるで俺の決断を試すかのように、ゆっくりと、しかし着実に遠ざかっているように感じられた。それは俺が追うべきか、それとも無視して本来の目的である地下へ向かうべきかを問うていた。

6人目

「仕方ないか……」

俺は、音がする方に進む決断をする。右も左も分からない中、情報源は音のみであったため、どこに向かうかわからないが、何もしないよりはマシであった。

7人目

足音を殺し、壁を伝いながら「カツン」という音が消えた方角へ歩を進める。
ライトの明かりを最小限に絞り、曲がり角からそっと先を覗き込んだ。
そこにあったのは、無残に剥がれ落ちた壁のタイルと、何かが引きずられたような「黒い筋」だった。

8人目

「この黒い筋は血痕か何かか?」

俺は、タイルが剥がれ落ちた壁に触れながら更に奥へと進んでいく。しばらく歩いていると周りの状況にも変化が出始めていた。

「な、なんだ!?硬かった壁が途中から柔らかくなっているのか……」

壁に触れながら、移動をしていると硬い壁から柔らかい壁へと変わっていたのである。しかし、柔らかくなっていたのは、壁だけではなかった。歩き続けていると足元を奪われるくらいに床が柔らかくなっていたのである。

9人目

壁と床が柔らかくなっただけではない。周囲の温度が急激に上昇し始めた。サウナのような熱気と、鼻を突くような酸性の臭い。ふと自分の腕を見ると、着ていた作業服の袖がボロボロと崩れ落ちているのに気づいた。
「この空気…服を溶かしているのか?」
壁から染み出している液体は、強力な溶解液だったのだ。布地は見る間に形を失い、あっという間に素っ裸になってしまった。
「くそっ、引き返すしかない…!」
ここが生物の胃袋の中か、あるいは狂った実験場なのかは分からないが、これ以上は命に関わる。俺は踵を返し、今来た道を戻ろうとした。

10人目

しかし、戻ろうとしたことが知られたからか、まるで生き物が口を閉じるかのように、戻り道が塞がれてしまう。

「嘘だよな?戻れなくなっちまったぞ」

なんとかして、戻ろうと道を開こうとするが、なんとしても開けたくないという意思があるのか、道が開くことはなく、男の手が火傷をおったかのように赤みがかり、水ぶくれもできてしまっていた。

「俺はこのままどうなっちまうんだよ!!」

11人目

ふと、視界の端で何かが動いた。 通路の先、霧がかった熱気の中に、一人の男の後ろ姿が見えた。彼もまた全裸で、ふらふらと力なく歩いている。
「おい! 助けてくれ!」
叫び声は届かない。

12人目

何度も何度も叫ぶが相手には届かず、戻ろうとしていた道だけが、だんだんと絞るように閉じていき、どんどん迫ってきていた。

「くそ……どんどん後ろも迫ってきてるじゃねぇか……このままだとどうなってしまうんだ」

聞こえなくてもと思いながら、手を前に出して前進していた。

13人目

後ろから迫る壁に追いたてられ、俺は必死に前方の男へと駆け寄った。
「おい、待て! 行かないでくれ!」
俺の指先が、ようやく男の背中に触れた。

14人目

しかし、男に触れた瞬間、目の前から消滅してしまう。その代わりに変化が起きていた。

「男は、どこに行ったんだ?それに、さっきまで迫ってきた壁もいつの間にかなくなっている……」

迫ってきていた壁がなくなった代わりに、大きな扉が前後に出現していた。前には、発電機へと続く扉、後ろには出口へと続く扉と書かれていた。

15人目

突然の静寂が、かえって鼓膜を圧迫する。 「夢…だったのか?」
そう呟き、俺は荒い息を整えようとした。
しかし、現実は非情な感触を突きつけてくる。 床の冷たさが、ダイレクトに足裏から全身に伝わった。下を向くと、そこにあるはずの紺色の作業服は影も形もなく、ただペニスが剥き出しになった全裸の自分が立っていた。
「夢じゃない。全部、現実だ…」
俺は出口と発電機の二つの扉を前に、究極の選択を迫られることになった。

16人目

「このまま全裸で進むか、全裸で外に出るか、どうする……仮に今、全裸で外に出たとしても、不審者扱いで逮捕されてしまう。だが、このまま全裸で先に進むことにも不安しかない」

俺は、悩んでいると汗が止まらなくなっていた。よしと覚悟を決めた途端・・・

「嘘だろ!?」

俺は、下半身を見ると、ペニスが発電機へと続く扉の方に向かって、勃っていた。

17人目

「おい、そこのあんた! 大丈夫か!」
不意に、発電機の扉の影から野太い声がした。 慌てて隠れようとしたが、声の主は俺と同じく、真っ裸の屈強な男だった。彼は肩で息をしながら、手近な配管を武器のように握っている。
「あんたも服をやられたんだな」
男は俺の股間に目をやり、ニヤリと不敵に笑った。
「戦意は十分ってわけか。いい根性だ。俺もさっきから、ここの『邪気』に当てられて、収まりがつかなくて困ってたところだぜ」

18人目

「そうなのか、俺はとりあえず、発電機室に用があるんだ。そこを通らせてくれ……」

「ああ……それは構わないが、気をつけろ。発電機室の邪気はますます濃くなっている手間取っていると自我すら保てなくなってしまうぞ……」

屈強な男は、邪気に負けじと自我を無理やり保たせていたが、目の前に現れた人物、つまり俺の股間を見て、様子に少しずつ異変が起き始めていた。

19人目

男の目は、先ほどまでの冷静な警告の色を失い、どろりとした熱を帯び始めていた。
「…おい、あんた。さっき、この通路の先で誰かを見なかったか?」
俺は震える声を絞り出した。目の前の男の変貌も恐ろしかったが、どうしても確認しておかなければならないことがあった。
「全裸の男だ。俺が追いつこうとした瞬間に消えちまった…あいつは一体何なんだ。あんたの仲間か?」
男は俺の問いにすぐには答えず、荒い鼻息を漏らしながら一歩、また一歩と距離を詰めてくる。

20人目

「なんか言えよ」
怖い、怖い、何をされるかわからない恐怖。

「あいつは俺の仲間じゃない」
そうなのか、では一体あれは…
「そうか、でも今はそんなこと関係ない。発電機室に行かせてくれ、頼む!」

男は考えるように腕組みをする。
「分かった。発電機室に行け。でも用事が終わったら戻ってこい。お前のお願いを聴いてやったんだからオレのお願いも聞いてくれるよなぁ!?」
俺は相手の圧力に負けて「分かった。」と言ってしまった。

21人目

発電室に入り扉を閉めて内側から鍵をかる。
(これだけじゃ心もとないな…)
近くに落ちていた鉄パイプを拾い上げて扉の握りに突っ込んで閂(かんぬき)にする。
金属が擦れ合う音が妙に大きく発電室に響く。
「うぇっ…」
俺は思わず呻き声を漏らした。室内には濃密な邪気が澱(おり)のように溜まり、
喉の奥を刺し肺の奥にまとわりつくようだ。
口を押さえ、息を浅くしながら懐中電灯で周囲を照らす。
巨大な発電機の影、その奥に非常用ロッカーがあるのを見つけ扉を開くと、
中には新品の化学防護服が吊られていた。
多分、重大事故が起きた時用の用意されたものだろう。
アレス・ケミカル製、2056年モデル
“コンドームマン”と揶揄(やゆ)されるほど見た目は悪いが
密着型で動きやすく機能性は折り紙付きだ。
俺は、それに腕を通しながら、ふと考えた。
(…なぜ、あの男はコレを使わなかった?)
この施設は異常だ。通路が生き物の体内のように変質し、男が消え、
俺は気づけば発電室の前に立っていた。
事前情報では施設内は無人と聞いていた。もしかしたら、あの男は人では無いのか?
邪気に咳き込み、思考を打ち切る。今は発電機を直して電源を確保する事だ…。

だが、発電機をチェックして俺は悪態をついた。
コードは無残に引き裂かれ刃物が突き立てられている。
何者かによる明らかに破壊行為だ。誰が、何のために…。

その時、扉が激しく叩かれた。
「おい!いつまで待たせるんだ!もう待ちきれねぇ~んだよ!早く出してぇ~んだよ!」
低く濁った声が、扉越しに突き刺さる。鉄パイプが震え固定が軋(きし)む。

現状、手元にある物では発電機を直すのは無理そうだ。
かといって、今 発電室の外に出るのは危険極まりないだろう。
通気ダクトに駆け寄るが、蓋は溶接されてびくともしない。

「あばど~ん」
間の抜けた声。振り返ると、壁に巨大な女の顔があった。
口が開き、奥にはアノ脈打つ通路が覗く。あの生物的な空間だ。
さらに奥で、男の影が手招きしている。

「早く出て来いよ!お前もヤリたいんだろ?おうっ、おかしくなるまで犯してやんよ!」
背後では扉が今にも破られそうな音を立て、壁の女は意味不明な声を漏らす。
前は未知なる怪物、後ろはガン決まりの種付け兄貴。

「なんで……こんな依頼を受けたんだ」
呟いた瞬間、俺は決めた。
一か八か、女の口内へと駆け出す。

暗闇が視界を呑み込む…

気づけば、最初にいた部屋に立っていた。机の上には置手紙と無骨な鉄塊。

『これで暴走した“量産型 種付け男”を殲滅しろ』

気楽な命令だ。横には次世代型アサルトライフル AF47《ジャガーノート》。
コイツが有れば このバイオ施設で少子化解消のために製造されていた
バイオ・モンスター”種付け男(sperman:スペルマン)”を殺すのは容易いだろう。

だが、俺は一人で、相手は何体いるかも分からない。
銃の重みが、現実の重さとして腕に伝わった。

「さて……どうする?」
俺は深く息を吸い、静まり返った部屋で次の一手を考え始めた。