怪しげなノート

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  • 性的描写有り
  • 現代ドラマ
  • SF
1人目

制服姿の女子が立っていた。
「新井田健司様ですね」
「はい。そうですけど」
「私、この学園の生徒会長で、沼井瑞恵と申します」
「なんですか?」
「これを見てください」
突き出されたのは未来ノートと書かれた物だ。
「なんですか、これは…」
「説明は後です。このノートに書かれている文字を見てください」
『青田エンジニアリング社で新型戦闘機「オルルド」が開発される』
オルルドとやらの設計図までもが添えられていたが、全く身に覚えがない。
だが、筆跡は明らかに自分のものだし、日付も昨日になっている。
「これって…一体どういうことなんでしょう? こんなもの書いた記憶ないんですけど」
「いいえ、あなたが書いたものです。そうやってごまかしても無駄です」
「と、言われても…。戦闘機の知識なんて無いし、そもそも僕は今までずっと学校に居たじゃないか。どうやってそんなものを書けるっていうんだ」
瑞恵はわざとらしくため息をついた。
「仕方ありませんね。では質問を変えましょう。このノートに書かれている新型戦闘機オルルドとはどんなものでしょう?」
「それは…ウウ!」
知らないはずなのに知っている。まるで、自分の中にもうひとり誰かがいるような感覚だった。

2人目

「大丈夫ですか?……キャッ!?」
瑞恵が健司の様子を確認しようとすると、ノートを奪いとられていた。

「あなたは、いったい誰で、新型戦闘機オルルドとはなんなんですか?」
瑞恵は、恐れながらも質問をしていた。

「このノートを見たのか?」

「ええ……」

「そうか。なら、知られたからには、始末するしないようだな……」
健司の肉体に入っている何者かは、オーラを纏った雰囲気を醸し出していた。それを感じた瑞恵は、ゆっくりと後退りしていた。

3人目

その次の瞬間、まるで古いフィルムが一瞬で焼き切れたようにオーラが消えた。
健司の顔から冷酷な表情が抜け落ち、代わりにいつもの彼の顔に戻った。彼は両手を額に当て、混乱と苦痛に顔を歪める。
「ウウ、頭が…割れそうだ…」
瑞恵は警戒を緩めず、わずかに前に出た。
「新井田君? 大丈夫なの?」
「わからない、沼井さん。何も…何もわからないんだ。まるで誰かが、僕の脳味噌の裏側を、錆びたスプーンで掻き混ぜているみたいだ」