呪い(のろい)と呪い(まじない)

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1人目

呪い(のろい)は怖い。
それは意図的だろうが意図的では無かろうが必ず人間の“負”の感情から起こるものだからだ。
呪われたは人間はもちろん呪った側の人間も呪いが失敗すれば己に跳ね返る可能性がある。

人を呪わば穴二つとはよく言ったものだ。

では呪い(まじない)はどうだろうか?
呪い(まじない)とは呪い(のろい)と同じ字を書く。

だが呪い(まじない)と聞くとあまり怖さは感じない。
恋のおまじないや幸せになるおまじないなど特に女性なら子どもの頃に何かしらおまじないをしたことはないだろうか?

消しゴムに好きな人の名前を書いて使いきると両想いになれる!だとか、足首に結んだミサンガが切れれば願いが叶うだとか。

のろいとまじないとはとても不思議で面白い。

2人目

同じ漢字を当てるのは、古来、日本人がそこに「言霊(ことだま)」という共通の力を見ていたからだろう。 どちらも本質は「意思の強制」に他ならない。

放課後の教室。友人の絵里が、真っ赤なペンで消しゴムに名前を書き込んでいた。
「ねえ、これ本当に効くのかな」
冗談めかして笑う彼女の目は、笑っていなかった。その消しゴムは、まるで絵里の執念をぶつけたかのように、異常なほどに黒く汚れていた。

絵里がその消しゴムを使い切った日、相手の男子生徒は階段から転落した。

3人目

それはオカルト的な何らかの存在によって引き起こされたとしか私には思えなかった。
なぜなら私は、その現場にいて男子生徒が階段から落ちる所を目撃してしまったからだ…。

あの時…スマホの見ながら階段を上っていた彼は踊り場で不意に足を止め…何かに驚き…。
そして突き飛ばされて転落した。

転げ落ちて来た彼、曲がらない方向に曲がった関節、廊下に広がっていく赤い液体…。
それらの全てが私には、どうでも良い風景でしか無かった。
畏怖…悲鳴さえ上げる事などできずに私は階段の上…踊り場の所…それを見ていた。
何かが居る…見えないが居る…。
それは階段の下に倒れた男子生徒を観察しているような気がした。
逃げたかった…全力で、この場を離れたかった…。
しかし、ピクリとでも動いて それの関心を引けば どうなるか分からない恐怖に体は石像のように固まっていた。
「た…助けて…」
思わず舌打ちをした。最後の最後までコイツは…。
それは私を見て、何かを”ぽ~ん”と放り投げて来た。
胸に当たり落ちたのは『異常なほどに黒く汚れた消しゴム』。
床に落ちた、それに目を向けた その一瞬で異様な気配をまとう者は居なくなっていた。

今、私の手の中には消しゴムがある…。
夜の闇よりもなお黒く。乾いた血のような赤黒さを持ち。
負の情念に形を与えたかのような それ…。

あの存在は、どんな意図でコレを私に渡したのだろうか?

4人目

私は自室の机で、その消しゴムをじっと見つめていた。
ふと、試したくなった。これが単なる「絵里の執念」の残り香なのか、それとも「願望を強制執行する装置」なのかを。

私は別の消しゴムを取り出し、そこに嫌いな教師の名前を書いた。そして、絵里から渡された(奪った形になった)あの黒い消しゴムを、その名の上に押し付ける。

5人目

 深夜。静まり返った暗い室内に秒針の音が響く。薄ら埃をかぶった机の天板を、安物のデスクライトの白い明かりが煌々と照らしている。重ね合わせた消しゴムを机の真ん中に置くと、まるで祭壇に捧げられた供物のように見えた。


 嫌いな人間の名前を書いた消しゴムを使い切ると、その対象に災いが降りかかる。私の学校では七不思議のひとつに数えられるほど有名な話だ。
 元々は単なるまじないだったものが、時を経て変質、あるいは反転する。こと恋愛成就や人間関係に対する願掛けには付き物と言ってもいいだろう。
 呪いもまじないも人が為すことである限り、そこには必ず理屈がある。
 絵里はルールに従って黒い消しゴムに名前を書き、最後まで使い切った。結果としてあの男は死んだ。それは良い。どうあれ、彼女の呪いは完結した。

(……でも、アレは違う)

 あの時。男子生徒を突き落としたアレは、絵里が使い切ったはずの黒い消しゴムを持っていた。そしてそれはいま、私の手元にある。「次はお前だ」とでも言うように。
 ……呪いはまだ続いているのだ。


 閉め切ったカーテンの向こうから葉擦れの音が微かに聞こえてくる。白と黒の境目をじっと見つめながら、私は深く息を吐いた。
 結論から言うと、特に何も起こらなかった。もしかすると踊り場で見たアレが現れるのではないかという、恐怖と僅かな期待に満ちた私の第六感は、ものの見事に外れたのである。
「……寝るか」
 あくびを噛み殺しながら私は立ち上がった。明日は朝から警察の事情聴取が行われる予定だ。余計なことを口走って変に疑われるような事態だけは避けたい。
 「オバケがクラスメイトを突き落として殺しました。」なんて、誰が信じるというのだろう。

 電気を消そうと伸ばした指先が供物の山を突き崩した。「権田」と赤く書き殴った部分は例の消しゴムを押し付けたせいか、得体の知れない汚れが煤のようにこびりついている。
 
──絵里はどうやって黒い消しゴムを手に入れたのだろうか。

 ふと、素朴な疑問が脳裏をよぎった。
 絵里とはあれ以来会っていない。何度かメッセージは送ったものの、返信が来ることは終ぞなかった。
 嫌な予感を振り払うように、私はライトの電源スイッチを強く押す。六畳間を満たす静かな暗闇は、あの消しゴムの色によく似ていた。