年内に収束
13月1日、誰もが平穏な12月の生活を終え、新しい暦を迎え入れた。しかし、奇妙な静けさが街を覆っていた。人々は「13月」という言葉を口にせず、ただ黙々と、1日、2日と、日を数えていた。カレンダーは書き換えられ、テレビのニュースも新しい日付を報じている。
だが、子供たちは学校で「12月の次は1月だよね」とわざとらしくささやき、年配の夫婦は「もうすぐ正月だね」と、ひっそりと正月の準備を進めていた。政府の思惑とは裏腹に、人々の心は「13月」を拒否していた。
政府は対策を考えていた。年内にウイルスを収束できなかったということを認めざるを得なくなり、公約を守れなかったと辞職を決断するしかなくなってしまうからです。
しかし、皆が諦めていたそのとき、一つの提案が出た。それは、24時間で1日の日付が終わるのと同様に、24月が終わったら、年内が終了だというにしたらどうかという提案だったのだ。
政府は、至急首相に確認をとることにした。
首相の決断は早かった。保身と「公約達成」への執念が、論理を凌駕したのだ。
「いいだろう、24月まで延長だ。ただし、国民には『季節の解釈』を再定義させろ」
翌日から、メディアは一斉に「真冬のひまわり」や「雪の中の衣替え」を美談として報じ始めた。カレンダーは24月まで刷り直され、さまざまな行事がズレていく。
18月を過ぎる頃には、桜が咲き誇る中で「現在は12月の延長線上であり、真冬である」という政府広報が流れ、街には防寒着を着て熱中症で倒れる人々が続出した。
病院では、ウイルス性の発熱か、熱中症による発熱か判断ができず、患者の対応で、病院内が逼迫する事態になっていきつつあった。これ以上は、病院側も対応しきれなくなり、いくつかの病院が連盟で、政府にとある嘆願書を提出した。
何枚もの束になっていた嘆願書を受け取った政府としては、対応せざるを得なくなってしまっていた。
「総理、もう限界です。
これ以上はこの国が崩壊する。
公約達成よりもすべきことがあるでしょう」
「今までの総理を思い出せ!
公約を達成できずにどれほど批判されてきた
私は逃げないぞ。
感染者数は実際減ってきている。
もう少しのはずなんだ」
人類史上初の20月。
官邸では皆半袖で過ごし、エアコンがよく効いていた。
「ええいくそ!感染病研究センターのヤツらは何をしているんだ!いつになったら成果を出すんだ!奴らさえ成果をだしたなら、こんな苦し紛れの策を採る必要もなかった!」
総理は激昂し、ウイルス対策省の大臣に睨みを飛ばす。
「奴らは何と言っている!」
大臣は額の汗を白いハンケチで拭いながら、目を泳がせる。
「そのう、総理、それが、彼らは全くスケジュール通りだと。去年の発表から変わりないと」
「ばかな!」
「ワクチンは2月に完成する。それに変わりはない、と」
2月。それは来ないことになっている。