シトラスの香水
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1週間前
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スピカ
1人目
彼女の臭いが嫌いだった。
曇天とした空の下、鬱蒼とした森の中に彼女はいた。
様々な種類の花々を籠いっぱいに抱え、これ以上ないほどに笑っていた。
「ねぇ見て!今日はこんなにいっぱい採れたのよ!」
私は勝手に動き出しそうになる腕を押さえつけて気丈に振る舞った。
満面の笑みで、私は笑う。お互いに、まるで生きているかのように。
「それはよかった、なら、早く戻ろう」
彼女の身に纏う放香が、私はどうしても受け入れられなかった。
正しくは、私の体が
それは、「敵対信号」を伝える香りだったから。
*
2人目
彼女が笑うたび、籠の中の花々がざわめき、黄色い毒霧のような胞子を振りまく。その瞬間、私の視界に、この暗い雲に覆われた空ではない「抜けるような青」が一瞬だけ過った。
(――逃げて、それは「花」じゃない。それは…)
頭蓋の奥で、誰かの悲鳴が響く。今の彼女の香りは、かつて文明を滅ぼした生物兵器の、獲物を誘引するための擬態の臭いだ。私の体がこれほどまでに拒絶するのは、かつての私がこれによって「終わった」からではないのか?