宇宙人の死体?!
「なぁ正孝、宇宙人の死体がこの町のどころかにあるらしいぜ?」
突然の発言で俺は冬弥の言っている意味が分からなかった。「……は? 何言ってんだお前。」
「だからさ、宇宙人の死体があるんだよ。町のどこかに!」
冬弥は興奮した様子でそう言った。俺にはその話が理解できなかったし、興味もなかった。そもそも宇宙人なんて存在するわけがない。それに死体をどうする気なんだろうか……。
「だからさ、今日放課後探しに行くぞ!」
冬弥は目を輝かせながらそう言った。こうなると冬弥は話を聞かなくなるから行く以外の選択肢はないだろう。まあ、暇だったし付き合ってやるか……。
そんな軽い気持ちでいた。
授業も終わり、俺たちは町を歩いていた。
「それで、どこを探すつもりなんだ?」
俺が質問すると冬弥は少し考えてから答えた。
「そうだなー。とりあえず森嶋公園に行ってみようぜ!なんかありそうな気がするんだよなー!」
正直、こんな話を信じているのかと思うくらい冬弥は楽しそうだった。そして、森嶋公園に着いたのだが特に変わったところはなかった。
「特にいつもと変わらないな。」
「う〜ん、おかしいな。絶対ここに何かあると思ったんだけどなぁ……」
落胆しながら冬弥は言った。やっぱりただの噂話だったんじゃないのかと思い始めた時、冬弥はある物を発見する。
「あれ?これなんだ?」
冬弥が拾ったのは銀色の角のような物だった。多分何かの部品か何かだろうが、冬弥は「これは宇宙人の角かもしれない!」と大はしゃぎしていた。本当にこいつは馬鹿だなと思いながらも、俺はこのくだらないことに付き合っている自分も馬鹿だと思い始めていた。
「とりあえず持って帰ろうぜ!」
冬弥は嬉しそうにその角をカバンに入れた。すると、突然角が光だし俺たちはその眩しさに目を瞑る。光が収まり目を開けると牢屋に閉じ込められていた。「えっ!?どういうことだ!?」
「おい、冬弥大丈夫か?」
「ああ、なんとかな。それよりなんで俺たちは牢屋に閉じ込められてんだ?誰か助けてくれよぉ〜」
情けない声を出しながら冬弥は泣き出してしまった。流石にこの状況はまずい。どうにかしてここから出ないと……。その時、目の前の壁の一部が開き中から宇宙人が現れた。
(う、嘘だ!う、宇宙人!?宇宙人だ!!)
宇宙人を信じていないからこそ正孝(まさたか)には一目見て分かった…
間違いなく自分達の前にいるのは宇宙人だと!
「な、なんだ お前!?俺達を、どうするつもりだ!」
「やめろ 冬弥!宇宙人を刺激するな!」
「宇宙人?」
「どう見ても宇宙人だろ!アイツが宇宙人じゃないって証明できるのか?できないだろ?
はい!論破!」
(ああ、本当 冬弥は馬鹿だなぁ~。「宇宙人の死体を探そう!」とか言ってたのに見て分からないのかよ!)
正孝が冷めた視線を冬弥に向ける中、当の冬弥は宇宙人をジロジロと観察している。
「それを…その鞄に入っている物を渡して貰えるかしら?」
2人が入れられた牢屋に近づいて来た銀色のビキニを着た宇宙人…。
頭部はボルゾイに似ていて、全身は白地に一部 茶色が混ざった被毛に覆われた女性は
ベルベットのような柔らかく艶のある声で冬弥に向かって手を差し出す。
「こ、コレか?いや、でも…」
(本当にコイツは どうしようもないな!)
正孝は強引に冬弥の鞄に手を突っ込み、公園で拾った"銀色の角"のような物を取り出す。
「コレだろ?渡す!渡す!渡すから俺を家に帰してくれ!」
「ちょっ!勝手な事するなよ!それは噂の真相を確かめる大事な手がかりなんだぞ!」
「手がかりも、足がかりもあるか!俺は、お前とは違うんだ!
将来はオヤジの後を継いで政治家になって、日本の未来を背負うエリートなんだぞ!
宇宙人に捕まって、そのキャリアに傷がついたら責任取れるのかよ!」
「な、なんだと!正孝、前から思ってたけどさ。お前さ~!」
冬弥が正孝の胸倉を掴んだ瞬間、パンパンっと手を叩く音が響き渡る。
「盛り上がって所、ちょっと よろしいかしら?それ渡してくれるの?くれないの?」
「渡します!」「渡さない!」
「冬弥、お前は馬鹿バカの馬鹿なんだから、黙って俺に任せとけ!」
「ハァ!?誰が馬鹿だって!」
「お前が"宇宙人の死体を探しに行くぞ!"とか馬鹿な事を言い出さなければ
こんな事にはなっ…」
―――
意識を刈り取られた正孝は地面へと倒れ 強かに地面に ぶつけた鼻からは血が流れ出る。
正孝の顎を至近距離からの高速フックで綺麗に撃ち抜いた冬弥は鞄から結束バンドを取り出すと彼の手足を縛り上げた。
「…ほら」
投げてよこされた"銀色の角のような物"を暫定"宇宙人"の謎の生命体は片手で受け止めると自分の額に押し当てる。
「へー、角みたいに見えたけど本当に角だったんだ」
彼女の額にピッタリと くっつき、赤や青、黄色や緑と目まぐるしく色を変える角を見ながら冬弥は口笛を軽く吹く。
「…随分と雰囲気が変わったわね」
「誰だって仮面を被って生きてるもんだろ?
コイツに見せてるオレは、私の本当の姿じゃないって事さ。
それで…アンタら何者なんだ?」
「私達はプレアデス星団 セラエノから来ました…ある物を回収するために。しかし…」
「星の智慧派の妨害が入った…」
「!…貴方、何者なの?」
「デルタグリーンの関係者さ。なるほどね…現地協力者が必要なんじゃないか?
バックアップも アフターケアも、保証はできないが…」
冬弥が未知の金属で作られた格子の間から手を差し出す。
「…そう簡単には手は結べないわ。私達、自己紹介さえ、まだじゃない」
「確かに…私は遠野 冬弥(とうの とうや)。しがない学生さ」
「*#%…。ああ、そうね…”レティシア”。
うん、それが一番 こっちの発音だと近いかしら。レティシアって呼んでくれる」
「それじゃあ、契約内容を詰めようか?」
―――
「ふはぁっ!ここは誰?俺は、どこだ!」
飛び起きようとして手足が縛られているがゆえに
無様に牢屋の床の上でビチビチと跳ねる正孝。
「クソ!英里刀(えりとう)家 次期当主:英里刀 正孝を誘拐するとは馬鹿な奴らめ!
もうすぐ警察の特殊部隊が突入してきて後悔する事になるぞ!
今なら俺を家に返せば、減刑を考えてやってもいい!解放しろ!」
「おっ!目が覚めたか 正孝」
牢屋の外で椅子に座ってモグモグと呑気に飯を喰っていながら冬弥が片手をあげる。
「ぬあっ!馬鹿!何やってるんだ お前!な、なにゆえ牢の外におる?
う、裏切ったな 冬弥!
許さぬ!許さぬぞ!この俺を裏切る事は万死に値し。子々孫々、七代の罪ぞ!」
「ちょっと何言ってるか分かんね~」
「馬鹿な冬弥、バカ冬弥には理解できぬか…」
机を挟んでアノ宇宙人の前で悠々と吉松屋の4種のチーズ牛丼という負け犬飯を食べている冬弥の睨みながら
『研ぎ澄まされし完璧な灰色の脳細胞(シャープネス・パーフェクト・ブレイン)』を
フル回転させる正孝。
(何故だ?何故、俺は拘束されている?何故、冬弥の牢屋の外に?
MA・SA・KA!冬弥はYouTubeで実しやかに囁かれる
世界を影から操るレプティリアンなのか!それならば、全て説明できる!QED!)
「いや、多分 違うぞ。何考えてる分からんが、違うって事は その顔を見れば分かるぜ」
何とも言えない微妙な表情で顔の前でヒラヒラと手を左右に振る冬弥。
「私はレティシア。貴方は"エリトオ マサタカ"で あってるかしら?」
「人の名前を確かめる時は拘束を解いてからと教わらなかったのか 宇宙人?」
「…確かに礼節を欠いてたわね」
牢屋を開けて中に入ったレティシアが結束バンドを切る…
「馬鹿め!スキあり!愚か者!」
素早く立ちあがっての襲撃は、容易く投げ飛ばされて地面とキスをして瞬く間に制圧された。
「彼って…随分と個性的ね」
「クラスの人気者だよ。意外性があって面白いんだぜ」
困惑の表情で正孝を見下ろすレティシアに、彼女の後を追うように牢屋に入って来た冬弥が答える。
「くっ、屈辱…」
「あ~正孝。お前が寝ている間に宇宙人のレティシアさんの探し物を手伝う事になったんだ。友達として手伝ってくれ」
「嫌だね!もう、お前に振り回されるのはゴメンだ!」
「それは残念だ…」
次の瞬間、レティシアの手の中にある装置が青白い光を放ち…
正孝の頭の中、記憶領域は白く白く漂白された…。
―――
「お~い!正孝、もう帰るぞ!起きろ!」
地面に倒れた正孝を足先で突っつく冬弥。
呻き声を上げなら目を覚ました正孝は、
辺りを見渡し そこが見慣れた"森嶋公園"である事を認識してから問う。
「今、何時だ?」
「17時だな」
「げっ!塾に遅れる!何で、もっと早く起こさなかったんだ!」
走り出す正孝の背に向かって冬弥を呼び掛ける。
「明日も、放課後は"宇宙人の死体"を探すからな。約束したからな~!」
「うん?ああ、分かってるって!」
冬弥からの言葉に生返事を返しながら
(”宇宙人の死体”…まだ探す気なのかよ。本当 冬弥は馬鹿だな~。
あの銀色の角みたいな機械部品で満足すれば良いのに…)と思う正孝なのであった…。