運気を呼ぶ幸せのパンケーキ
「陽介、帰ろうぜ!」
「おう!」
と俺は悠斗と一緒に帰る。
今日はバスケ部が休みだから久しぶりに悠斗とデートだ。
向かう先は栄にあるパンケーキのお店だ。
ふわふわで美味しいと聞いてスイーツすきの悠斗が黙ってはいなかった。
電車に乗って栄駅で降りて目的のパンケーキ屋に向かう。
お店に着くとやはり人気店な為結構席が埋まっていた。
「これがSNSにアップすると運気が上がるパンケーキの店か。」
「来ている客皆スマホで撮影しているな。」
「女性ってこう言うの本当に好きだよな。」
そんな事を話しながら席があくまで待っていた。そして20分くらいするとようやく席が空いたのか俺達が案内される。
「ちょっと悠斗、なんかここの客の目やばくないか?」
「なんだろう、やけにギラついているよな。もしかして来たらやばい店?」
「それは無いだろうよ、テレビでもやっていたんだからさ。」
「だよな。」
だが今いる客全員何かに取り憑かれたような目をしており、店の雰囲気は異常だった。
ふと隣のテーブルを見ると、パンケーキを食べている男性がいた。その顔は無表情で、ただひたすらにフォークを動かしている。よく見ると、パンケーキには鮮やかなイチゴが乗っているのに、男の皿には黒い染みのようなものがこびりついている。
「悠斗、あのパンケーキ、なんかおかしくないか?」
「本当に変だ。普通なら、皿が汚れていたら店員に言うだろう?」
俺がそう言うと、悠斗は眉間に皺を寄せた。
その時、一人の店員が水を注ぎに、隣のテーブルに近づいていった。俺と悠斗は息を詰めてその様子を見守る。
店員は男の皿を見て、一瞬かすかに顔を歪めたように見えたが、すぐにプロの笑顔に戻り、「お水のおかわりはいかがですか?」と静かに尋ねた。男は無言で首を横に振る。
店員はそれ以上、皿の異変について何も言及せず、平静を装って立ち去った。
まるで、その黒い染みが「あって当然」のものであるかのように。