よってらっしゃい!
「さぁ今回も始まりました!TV番組「よってらっしゃい!」。視聴者の皆さんが主催者ですっ。」
「えーと今日は。10人の方にきてもらいましたー!お題は………デデンッ『怪談ナイト』。これは、
怪談を語ってもらいます〜。作り話でも、本当にあったちょっぴり不可解なことでもOKです」
高橋がそう言った瞬間、スタジオの照明が真っ赤に染まった。
「……あはっ、高橋さん。それ、『作り話』ってことにしないとダメですよ?」
司会者の女性が、今まで見せたことのない無機質な笑顔で詰め寄る。
「い、いや、本当なんです!あの店の奥で、確かに腕を……」
高橋が震える手でスマホを取り出そうとした瞬間、彼の背後のセットを突き破り、巨大な「手」が伸びてきた。
「ギャアアア!」
悲鳴は一瞬。高橋の体はセットの裏側へ引きずり込まれ、バリバリという嫌な咀嚼音がマイク越しに響き渡る。
マイクが床に落ち、甲高いハウリングがスタジオを満たした。
照明は赤から白へ、白から闇へと不規則に点滅する。
司会者の女性は微動だにしない。
いや、正確には瞬きすらしていなかった。
「放送、続けて」
スピーカーから流れた声は、彼女のものではなかった。
スタジオの四方八方、いや、壁の内側から響いている。
引きずり込まれたはずの高橋の悲鳴は、もう聞こえない。
代わりに、もぐもぐ、と。
咀嚼する音だけが、規則正しく鳴っていた。
カメラが自動でパンする。
映ったのは、セットの裏側に“増えて”いた空間。
飲み屋の奥によく似た、薄暗い座敷。
床には畳。柱には無数の爪痕。
そして、店主。
いや、店主だったもの
人の形を保っているのは腰までで、上半身は番組のセットと癒着していた。
腕は何本もあり、一本が高橋のスマホを摘まみ、一本が口へ運んでいる。
画面にはテロップが出る。
《※この番組はフィクションです》
観覧席から、拍手が起こった。
誰も立ち上がらない。
誰も逃げない。
司会者の女性が、ようやく笑った。
「次の体験者の方、どうぞ」