妖怪男

1 いいね
1000文字以下 20人リレー
1週間前 516回閲覧
  • 自由に続きを書いて
1人目

退社後、期間限定のポップアップストアを見て帰ろうと思い、職場の駅のコンコースを歩いていると知らない男が右手から近付いてきて、私は脊髄反射で避ける。
早足で歩く私を追いかけて男が何やら声を掛けてくる。

『妖怪なんだけど、良かったら飲みに行かない?』

やれやれ不愉快なナンパ男か、と思い5.6歩足を進めた所で足を止めた。

……今なんて?
…………妖怪?

まさか。聞き間違いだろう。

しばらくその場で棒立ちになって固まっていたが、どうしても真実を確かめなければと思い、妖怪男に向き直る。

急にこちらを向いた私に面食らったのか、男は急にオドオドと視線を巡らせる。

2人目

 口元に手を当てたり、頭を搔いたりとにかく落ち着きがなかったが、すぐに気を取り直し、
『飲みにいかなぁい〜?おれ、いい店知ってんだよね。最近、流行りのやつ!なんなら、ちょっと高めの所でもオッケー!オッケーー!おけ丸水産!!寿司でもなんでも奢るからさ〜♡』
 と矢継ぎ早に喋り始めた。

 男は、ピッタリとしたワイン色のジャケットを羽織、足元はビットローファーだ…

3人目

(あんま趣味は良くない…って言うか、チグハグだな)と思いながら気になっている事を言葉にする。

「ねえ、妖怪っていうのは本当なの?何の妖怪?どこから来たの?」
「えっ?そう俺 妖怪!時代の最先端を行く都会の妖怪『近藤 夢路(こんどう ゆめじ)』。夢の路と書いて夢路。奇麗なお姉さんを甘い夢へ導く夜の帝王さ♪
詳しくは飲みながらにしなぁ~い♪」

興味を示したのが嬉しいのか彼のテンションは爆上がりし、
無暗やたらと恰好を付けながら腰に手を回そうとしてきたのでピシャリと その手を叩く。
普段なら こんな奴 相手にしない…
だが妖怪を自称する コイツの正体を確かめるまではと我慢する。

「へへ…おれが常連の本場イタ飯屋に行こうぜぇい!え~と…」
「北沼 珠仔(きたぬま たまこ)。只のOLよ。
それじゃあ近藤さん エスコートしてくれるかしら」
「へへっ、こっちだよ~タマコちゃ~ん。でさぁ~…」

ニヤニヤ、ニチャっと愛想笑いを浮かべ、ベラベラと口を動かし珠仔の事を聞き出そうとしながら 同時に”いかに自分が凄い奴なのか”という武勇伝を語る夢路。
(そんなモンで気を引けるって、本気で思ってるのか?)
心の中でゲンナリとしながら、それを夢路に悟らせないよう気を付け。
適度に相槌を打ち興味があるフリをしならが、逆に質問をしたり カマをかけてみるが、
夢路は あからさまに答えを はぐらかし”妖怪である”という確信は得られない。

(少なくとも この有様からして、名のある大妖怪が”うつけ”を演じてるわけじゃなさそうだな…木っ端 妖怪か只人か)

「妖怪なんだけど」と言って声をかけてきた阿呆への興味は、刻一刻と しぼんでいく。
(一応、把握しておいた方がイイかと思ったが。
この感じなら、その内 情報が回って来そうな気がするな…。なら…)

それは突然だった!隣を歩いていた夢路の口から乳白色の塊が吐き出される!
酷く生臭くベトベトした物が体に絡みつき動きが阻害される。

「ごめんよ。俺さコンドームの付喪神なの。このままだと消えちゃいそうなんだ」
正体を現した近藤はペコペコしながら、
珠仔のスカートとショーツを一度に引きずり下ろす。

ボロン! 毛むくじゃらで大きくて太い立派な代物が現れた。

「ごめんなさい。私…オイラも化け狸。妖怪なんだよ!」

妖怪男の夜は、まだ始まったばかりだ…