モンスターの公衆便所
2つの種族の今の状況は世界の縮図そのものであった。
人間たちが魔王率いる魔族・モンスタ―連合に敗れて5年。
生き残った人間たちは地上に跋扈する彼らから逃れるため、目立たぬよう極力少人数での集団生活を送っていた。その集団の数は数千を超え、人口も数百万にのぼる。
しかしながら、集団に馴染めずに落伍したものなどは結果、孤独な生き方を強いられる。
彼女もその一人であった。
生まれた時より愛情を教える者はおらず、集団の中にいながら自分の立ち位置は常に孤立していた。
彼女はもう諦めていた。どうせこのまま、誰にも知られることなく死んでいくのだろうと。目隠しのせいで何も見えない。しかし、すぐそばにいるモンスター…オークの荒い息遣いは、彼女の恐怖を煽り続けた。
その時、静寂を破る鋭い金属音が響いた。オークが低く唸り声を上げたかと思うと、次の瞬間にはどさりと何かが倒れる音がする。目隠しをされたままの彼女は、何が起きたのか分からない。ただ、生臭い雄の匂いを感じた。
「おい、大丈夫か?」
その声は、驚くほど澄んでいた。彼女は思わず息をのむ。目隠しがずり落ちてきたので恐る恐る目を開けると、そこには銀色の鎧を身につけた、人狼の青年が立っていた。
彼の足元には、巨大なオークが口から泡を吹いて倒れている。
オークの筋肉質な体は何も身につけておらず、何度も射精をしたようだ。勃起したままの巨根の周りに白い水溜りができていた。
青年は彼女の目隠しをゆっくりと外し、縄を解いていく。彼の指先が触れた瞬間、彼女は初めて誰かの温かさを知った。それは、この世界にまだ希望があることを教えてくれるような、優しい温もりだった。
「この魔物は、なぜ気絶しているのかしら。目立った怪我はしていないのに」
彼女が怯えながら尋ねると、人狼の青年は自分の銀色に輝く剣を鞘に収め、淡々と答えた。
「私の剣の加護だ。銀の魔力には、不浄な欲望を体外へ『排泄』させる力がある」
人狼が放った銀の衝撃波が、オークの体内に溜まっていた邪悪な魔力と性衝動に直接干渉したのだ。これによりこのオークは自分の意志とは無関係に意識を飛ばすほどの射精してしまったのだ。
地面に広がる生々しい匂いと、精液の海。その中心で目を覚ましたオークは、かつての自分がいかに「禍々しい」存在であったかを理解した。彼の表情には、魔物特有の凶暴さは微塵も残っていない。
「銀の主よ。俺を…俺を救ってくれたのは、あんたか」
人狼の青年は無言でそれを見据える。オークは傍らに立ち尽くす女に視線を向け、深く頭を垂れた。
「すまなかった。俺は、この汚れきった欲望で、貴女を汚そうとした。だが、今は違う」
オークはそのまま青年の足元に跪く。
「この力、この陰茎。不浄を排していただいた恩に報いるため、貴公らを守る槍となろう」
オークは震える膝で立ち上がると、一切の羞恥を捨て去ったかのように、腰を前へと突き出した。銀の衝撃によって限界まで昂り、未だ鎮まることのないその「剛根」を、まるで捧げ物のように女と青年の前に晒す。