女怪盗と新人捜査官と薬
新人捜査官の草壁誠と峰不二子が新婚夫婦として、潜入捜査を開始してから、数ヶ月まだ密売組織のメンバーに怪しい動きは見られずにいた。
「不二子さん、まだ組織に動きはありませんね。僕たちがアパートに来てから、3ヶ月全く変化がありません」
「慌てない。慌てちゃうと気付かれちゃうわよ」
「はい。すみません。」
誠は、不二子に頭を下げて謝罪していた。誠が頭を上げると不二子は近づいて来ていた。
「それと、潜入捜査中は、峰不二子の名前を出さないでね。私の顔知られているかもしれないから、変装しているのに、名前を呼ばれたら、密売組織にバレてしまうわよ」
不二子は、誠に身体を密着させながら言っていた。誠は、潜入捜査の相棒が、美人すぎる峰不二子だったため、胸の鼓動が高まっていた。
「私は、今は草壁有希子なんだからね。お願いよ……誠」
「はい。」
不二子が、抱きしめてきたので、こちらも不二子を抱きしめていた。
そうこうしていると、隣の部屋にいた密売組織のアジトの部屋に動きがあった。
日が暮れ始めた頃、密売組織のアジトの部屋に訪問客が増え始めていた。正確な人数ははっきりしないが、5、6人ぐらいの話し声はうっすらだが、聞こえていた。
不二子と誠は、隣の部屋の密売組織のメンバーたちに盗聴していることを気づかれないように、息を殺しながら、会話を盗聴していた。
「最近、何か変わったことは?」
密売組織のメンバー達の中で、リーダー的存在の男性が質問していた。
「特には何もないですね」
「俺も気になることは特に……」
密売組織のメンバー達、数人は目立った変化は特に見られなかったため、頭を傾げながら返事をしていた。
「そうですね。強いて言うなら、数ヶ月前に、お隣に新婚夫婦が引っ越してきたぐらいですかね」
誰も目立った変化を感じていない中、一人だけ若い男性のような声をした人物が引っ越してきた不二子と誠の存在を怪しがっていた。
「その新婚夫婦がどうかしたのか?」
「あっ……いえ、何というか、新婚夫婦のように見えないというか、部屋が静かすぎるんですよね。喧嘩までとは言いませんが、言い合いとかしたりする声も聞こえてこないですし、奥さんの方というよりも、旦那さんの方がぎこちないんですよね」
若い男性のような声をした人物は、客観的な視点から自分の考えを話していた。
「んっ!?密売組織組織のメンバーの若い男性かしら?私達を怪しんでいるみたいね……なかなか、油断できない相手になるかもしれないわね」
不二子は、密売組織のメンバーの中で、一人だけ最初に疑いを持った人物を一番の警戒する相手だと認識していた。
「そういえば、確かに静かだよな。新婚夫婦で、しかも奥さんがあんなにべっぴんさんだし、スタイルが良いなら、エッチな事していて、喘ぎ声をあげていてもおかしくないと思うんだよな……」
「確かに、俺だったら、あんなにエロい身体をしている奥さんがいたら、毎晩やりたくて仕方ないぜ……」
密売組織のメンバーで、中年の男性二人は不二子をいやらしい目で見ていたようで、妄想で盛り上がっていた。
「俺は会った事ないから、わからないが、その二人まさか俺たちを捕まえるために来たんじゃないよな?」
「この流れは不味いわね。このままだと、私達の正体に気付かれるかもしれないわね」
不二子は、盗聴していると自分達の正体に気付かれると不味いと考え、思考を巡らせていた。
「誠、来て……」
「ふ、有希子さんどうしたんですか?」
不二子は、手で誠を呼ぶ合図をすると、誠は不二子に近付いていく。誠が近づくと不二子は、とんでもないことを発言する。
「誠、今から私を抱きなさい」
「へっ!?有希子さんの身体を抱く!?」
「良いから早くしなさい。彼らは、私達の正体に疑惑を持っているわ。このままだと私達が彼らを捕まえに来た人間だとバレてしまうわ。それでも良いの?」
仕事のためとはいえ、彼女ができたことがない誠にとって、女性の身体を抱くというのは、そう易々なことではなかった。